セルリアンブルーの9月2016-09-02

コバルトブルー マリンブルー
8月の喧騒を引きずって
セルリアンブルーの9月がはじまる

~岡野史佳 フルーツ果汁100% Fresh7 Fruit Salad Days~


9月がセルリアンブルーというのは、言い得て妙だな、と思っていた。

澄んだ海や空を思わせるコバルトブルーやマリンブルーは、確かに8月のイメージ。対してセルリアンブルーは少し緑がかった明るい青。
深みがあるけどぱきっとしていて、9月のすっきりとした空気にぴったりだ。

岡野史佳は色彩のイメージが豊かな作家であるし、フルーツ果汁100%は主人公たちが絵を描いている設定のため、こういう印象的な「色」のイメージやモチーフが作中にたびたび登場する。

冒頭は、色々あった夏が終わって、ある予感を持った主人公のモノローグ。
その少し前に、別の登場人物が描いた印象的な「青い」絵を見たことへのつながりも感じさせる、上手いフレーズだ。

絵を描いている人にしか出てこない言葉の選び方だなと思う。
逆に、小説家には書けないフレーズではないだろうか。

私も、学生時代は絵を描いていた。中学生の時はポスターカラーの彩色が好きで、そこで初めてセルリアンブルーを知った。

小学校の水彩絵の具では「青」1色だったものが、ポスターカラーになるとコバルトブルーとセルリアンブルーに分かれ、その微細な違いにときめいた。
青系は好きな色だったので、どちらもよく使っていた。

そんな学生生活を過ごして、この作品を読んだのは大学生の時。
私には親しみのある、けれど絵を描かない人にはそんなに馴染みのないであろう「セルリアンブルー」を、こんなに的確に言葉にできる人はいないのではないか?

この「青」の表現が印象に残り、毎年、9月になると「セルリアンブルーの9月」を思い出し、こっそりと口に出して呟いてみたりもする。

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